ついに来ました。
『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』のティザー予告が2026年7月20日に解禁されて、そこからサンディエゴ・コミコンまで、情報が怒涛のように流れてきています。
ぼくもティザーが公開された日、通知が来た瞬間に手が止まりました。ソーの一撃を指先で止めるドゥーム。あそこで完全に持っていかれましたね。
ただ、この作品には知っておくとグッと面白くなる裏話があります。
もともとこの映画、『アベンジャーズ/カーン・ダイナスティ』という別のタイトルで作られる予定だったんです。
この記事では、公開されている情報のまとめと、幻に終わった「カーン編」の顛末をまとめます。
さらに後半では、ネット上に出回っている「カーン・ダイナスティの脚本」とされるものの中身も紹介します。真偽は不明ですが、これがかなり面白いんです。
まずは基本情報をおさらい
『アベンジャーズ/エンドゲーム』から7年。監督はあのときと同じルッソ兄弟が戻ってきました。
ジョー・ルッソ監督は公式サイトでこう語っています。
この作品が魅力的なのは、新しい”はじまり”だからなんだ。僕たちは終わりの物語を(『エンドゲーム』で)語った。そして今度ははじまりの物語を語るよ。僕たちを再び呼び戻すことができたのは、”正しい物語”だけだったんだ
「終わりの物語」を撮った人たちが、「はじまりの物語」を撮る。
この言い回し、じわじわ効いてきませんか。エンドゲームで一度きれいに閉じたものを、もう一度開けにきているわけです。
そしてケヴィン・ファイギ社長のコメントがまた不穏で。
25年間この世界に関わってきた私にとっても、どこか非現実的な体験です
MCUの全部を知っている人が「非現実的」と言う。これ、相当なことが起きるという意味だと受け取っていいと思います。
ここまでに出ている情報まとめ
情報は3段階で出てきました。時系列で追いかけます。
特報5本「〜は帰ってくる」
2025年末から2026年年明けにかけて、短い特報映像が5本公開されました。タイトルがすべて「帰ってくる」なんです。
※5本すべてマーベル公式サイトでまとめて視聴できます。
スティーブ・ロジャースの復帰が発表されたときのSNSの荒れ方はすごかったです。クリス・エヴァンスはエンドゲームで完全に退場したはずでしたから。
特報第3弾では、プロフェッサーXとマグニートーが手を取り合う場面も出ました。長年いがみ合ってきた二人が、覚悟を決めたような笑みを浮かべる。この時点でただごとではないと分かる作りでした。
ティザー予告(7月20日)
そして本命のティザー予告。約2分25秒。公開から24時間の総再生回数は約5億300万回で、映画の予告編として歴代2位という記録が出ました。
押さえておきたいポイントを並べます。
荒廃した「恵まれし子らの学園」。 冒頭、X-MENの本拠地が崩れかけた状態で映ります。プロフェッサーXが窓の外に見るのは、世界に迫る巨大な天体。コミックでいう「インカージョン」——宇宙同士の衝突と解釈されています。
ドクター・ドゥーム、ついに姿を現す。 シルバーのマスクに緑のマント。セリフは「今日が終わるまでに、想像を絶する決断を迫られる」。ロバート・ダウニー・Jr.の声とは思えない重さです。
ソーの一撃を、指先で止める。 ストームブレイカーの全力の一振りを、ドゥームが指一本で受け止めます。個人的にいちばん鳥肌が立った瞬間でした。サノスですらこんな止め方はしませんでしたから。
神になったロキ。 TVAのカードを手にしたロキが登場。ドラマ『ロキ』シーズン2のラストで時間軸そのものを支える存在になった彼が、どう関わるのか。
シャン・チー vs ガンビット。 MCU側とX-MEN側のヒーローがぶつかり合います。味方同士のはずが、なぜ。
ヒューマントーチとスー・ストーム。 抱き合う二人の背後に、冒頭のプロフェッサーXが見ていたのと同じ色の光の壁。
そしてラスト、ムジョルニアを手にするスティーブ・ロジャース。 これはもう説明不要ですね。
コミコン2026で出た追加情報

2026年7月のサンディエゴ・コミコンでも、いくつか情報が出ました。
ペギー・カーターの参戦は驚きました。スティーブの復帰と無関係ではないでしょうね。
会場限定で流れた新予告は、ドゥームが玉座に座る場面から始まったそうです。そこにスー・ストーム(ヴァネッサ・カービー)のナレーションが重なります。
ヴィクターは常に誰よりも賢い男だった。昔は全く違う人間だった
ヴィクターというのはドゥームの本名、ヴィクター・フォン・ドゥーム。原作でもドゥームとリード・リチャーズは大学時代の同級生で、実験の失敗をきっかけに決裂します。その因縁が映画でも描かれるということですね。
この映画、本当は「カーン・ダイナスティ」になるはずだった

さて、ここからが今日いちばん話したかったところです。
この『ドゥームズデイ』、当初はまったく別の映画になるはずでした。
タイトルは『アベンジャーズ/ザ・カーン・ダイナスティ』。公開予定は2025年5月。ラスボスは「征服者カーン」でした。
ドラマ『ロキ』で「在り続ける者」が排除され、無数のカーンが解き放たれる。『クアントマニア』のポストクレジットでは、円形闘技場にカーンたちが集結する「カーン評議会」が描かれました。
サノスの次の大ボスは、カーン。
そういう流れが、しっかり作られていたんです。
カーン編は、なぜ消えたのか
理由は大きく二つあります。
一つは、俳優の降板です。
カーン役のジョナサン・メジャーズが2023年に暴行などの容疑で逮捕され、同年12月18日に有罪評決。マーベル・スタジオは判決当日に契約解除を発表しました。
もう一つは、カーン自体の手応えです。
ケヴィン・ファイギ社長は後にこう語っています。
カーンでは大きさが足りない、サノスに及ばないと気づき始めていた。そしてそうなれるキャラクターはただ一人、何十年もコミックでその役割を担ってきたキャラクターだけだった。フォックス買収のおかげで、ついにそれを手に入れた。ドクター・ドゥームだ
ちなみに時系列を追うと、実は俳優の解雇より前に体制が変わり始めていたことが分かります。
監督も脚本家も、事件の前にすでに入れ替わっていたんですね。
書き上がっていた脚本は、どこへ消えたのか
ここ、気になりますよね。確認できる範囲で整理します。
ジェフ・ラヴネスは、実際に脚本を1稿まで書き上げていました。
米ハリウッド・リポーター誌(2023年11月27日)は、ウォルドロンの起用を伝える記事の中で、ラヴネスが「前の稿を執筆した」と記しています。ザ・プレイリスト誌(同年11月15日)も「1稿を書いた」と報じました。
ただし、どちらも「a draft(1稿)」という単数形です。完成稿だったのか、何ページあったのかまでは公表されていません。
そしてその脚本は、再利用されずに破棄されました。
ウォルドロンが一度書き直し、その後さらにスティーヴン・マクフィーリー(『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』の脚本家)が全面的に作り直しています。
ラヴネスは『ドゥームズデイ』のクレジットに入っていません。
幻に終わったストーリーの全貌
唯一、関係者が明かしたボツ案
内容について、関係者本人が語った例が一つだけあります。
脚本家のマイケル・ウォルドロンが、Redditの質問企画でこんな話をしています。
ふざけてますよね。でも、こういうシーンが本編に入っていたら、それはそれで名場面になっていた気がします。
ウォルドロン本人は「たぶんカーン・ダイナスティの最後に出るはずだったトカゲ顔のカーンだったと思う。よくは覚えていないけど、とにかく楽しかった」と振り返っています。
ブレインストーミング段階の話なのか、実際に脚本に入っていたのかまでは分かりません。
そして、ネットに「脚本そのもの」が流出した
さて、ここからが本当の本題です。
実は2025年ごろから、「カーン・ダイナスティの脚本が流出した」としてPDFがネット上に出回っています。168ページ、日付は2023年4月28日、第1改訂稿という体裁です。
そして海外メディアも、これを取り上げました。
ただし——
そのうえで。
これがけっこう面白いんです。ぼくも読み進めながら「これが実現していたら……」と何度も思いました。
以下、流出したとされる脚本の内容を紹介します。
オープニング:ビヨンドへ堕ちたカーン

映画は、前作の続きから始まります。
『クアントマニア』のラスト、量子世界での最終決戦。スコットとホープは二人がかりでカーンを、彼の脱出艇の動力源「マルチバース・エンジン・コア」へと押し込みました。カーンはその光に飲み込まれ、消えていきます。
死んだと思っていましたよね。ぼくもそうでした。ところがこの脚本では、彼は消滅していない。「ビヨンド」——あらゆる宇宙の外側にある領域へと、延々と落ち続けていたことになっています。
落ちていく彼の目に浮かぶのは、朝焼けのバラ畑。そこに立つ女性の幻に、彼は囁きます。ラヴォーナ、と。妻ラヴォーナと、幼い我が子。自分が置き去りにしたせいで、死なせてしまった家族です。
ラヴォーナという名前、『ロキ』を観た方なら覚えがあるはずです。TVAの判事だったあの女性。この脚本では、彼女の変異体がカーンの妻だったという設定になっています。
冒頭からこれ、ずるいと思いませんか。
ヴィランの映画ではなく、ヴィランの物語として始めている。
物語の核は、カーンとラヴォーナの物語だった
ここがいちばん驚いた部分です。
この脚本の相当な分量が、カーンとラヴォーナの関係に割かれています。
征服者カーンは、この物語では倒すべき怪物ではありません。すべてを失い、取り戻そうとする男として描かれる。
サノスに『インフィニティ・ウォー』があったように、カーンにも彼自身の映画を用意していた、ということですね。
敵は「カーン評議会」の3人
では誰が敵なのか。カーン評議会です。
彼らの登場シーンがすさまじい。フォックス版X-MEN——ヒュー・ジャックマンたちが演じてきた、あの旧シリーズのX-MENたちの血を飲む儀式から始まります。
彼らの計画は明快でした。シャン・チーの腕に宿る「テン・リングス」と、ミズ・マーベルの腕輪「ネガ・バンド」(実際のMCUでは『マーベルズ』で「クアンタム・バンド」と判明していますが、脚本ではこの名で呼ばれています)。この2つを手に入れ、宇宙を自分たちの意志どおりに作り変える。
そして——ミュータントとファンタスティック・フォーを、すべての時間軸から消し去る。
冒頭でX-MENの血を飲んでいた意味が、ここで繋がります。
TVAは、すでに手遅れだった
一方、TVA(時間変異取締局。ドラマ『ロキ』に出てくる、時間軸を管理する組織です)は大混乱に陥っていました。
評議会の計画が動き出したことで、分岐した時間軸が次々と焼き払われていきます。ロキは時間が尽きることを恐れ、モビウスの手には「マルチバース・アベンジャーズ軍」の編成書類が渡されました。
地上ではスコット・ラングが、カーンの悪夢にうなされ続けていました。何かが来る。そう確信した彼はかつての仲間たちに警告の電話をかけ続けますが、誰一人として出ません。
この「誰も気づいていない」という描写、じわじわ怖いですよね。
集結するとされたヒーローたち
ピーター・パーカーはESU(エンパイア・ステート大学)に通っていて、マイルズとはすでに顔見知り。この設定、実現していたら熱かったですね。
ワンダーマンをトレヴァー・スラッタリーが慰めている場面もあります。なお脚本でのワンダーマンの設定は、後に配信された実ドラマ『ワンダーマン』とは別物になっています。脚本の日付はドラマ配信より前なので、そこも比べどころです。
3つのチームに分かれる作戦
中盤、ヒーローたちは3隊に分かれます。
キャプテン・アメリカ隊がイモータスの戦艦にたどり着くと、そこでネガ・バンドの真の力を知ります。正しく使えばテン・リングスをも超える。イモータスはこれを「カーン神話における最も神聖な遺物」と信じていました。
一方その頃、スパイダーマンとマイルズを中心とした街レベルのヒーローたちは、ラーマ・トゥットのカーン軍と要塞前で激突しています。
地上は地獄になっていた
そして、この脚本でいちばん容赦がないのがここです。
世界各国の指導者たちは、死んだセレスティアル——『エターナルズ』のラストで海から突き出したまま止まっている、あの巨大な天体存在ティアマットと見られます——から採掘したアダマンチウムでセンチネルを起動させます。原作コミックではミュータント狩りに使われた巨大ロボット。それが今回は、超人全体に向けられました。
しかも承認したのはロス将軍。『シビル・ウォー』でソコヴィア協定を推し進めた、あの男です。超人は管理すべきだという彼の姿勢は、この脚本でも一貫していて——ついにアベンジャーズそのものを脅威として撃つところまで行き着いたわけです。
ワカンダは廃墟と化し、キャプテン・アメリカが生き残りをかき集めることになります。
そして、多くが死ぬ
犠牲者の名前を並べると、その重さが伝わると思います。
ピム一家が全滅している時点で、相当な覚悟の脚本です。そしてMCU初登場のマイルズが、その初登場作で死ぬ。
終着点:バトルワールドの創造
クライマックスは、カーン同士の潰し合いから始まります。
まずイモータスが、テン・リングス奪取に失敗したセンチュリオンを粛清。そのエネルギーと魂を吸収し、残った評議会は恐怖から「カーン・プライム」と唱和して服従します。失敗は処罰、力は吸収。評議会は最初から、そういう場所だったんです。
そこへ、ビヨンドから戻った男が現れます。
征服者カーン。ビヨンドの果てで「ビヨンダー」——多元宇宙の外に住む、原作『シークレット・ウォーズ』で世界を作り変えたあの全能存在の力を手にした姿です。
決戦の舞台は、時間軸の樹の中枢。『ロキ』シーズン2のラストで、ロキが無数の時間軸を束ねて支えた、あの世界樹のような場所です。カーンはその中心でイモータスを殺し、燃え残った時間軸の糸を吸収していく。樹を守るロキも止めに入りますが、及びませんでした。
なぜカーンがカーンを殺すのか。彼にとって評議会は、多元宇宙を壊す脅威であると同時に、ラヴォーナのいる「たった一つの完璧な時間軸」を邪魔する、自分自身の失敗作たちだったからです。
そしてテン・リングスとネガ・バンドを融合させ、現実を作り変えた。
生まれたのが——バトルワールド。無数の壊れた時間軸の断片を継ぎ合わせた、彼だけの世界です。
生き残ったわずかなヒーローたちは、TVAと共に箱舟に乗り込み、脱出しました。
カーンが最後に手に入れたもの
ラストシーンが、この脚本のすべてを物語っています。
回想の中で、ラヴォーナはカーンにこう言っていました。
なら燃やせばいい。二人で、また築くから。
その言葉どおり、彼は世界を燃やし、作り直した。
新しい時間軸の玉座に座るカーンの隣には、生きているラヴォーナ。しかも、身ごもった姿で。
失った妻と、失った子。彼が世界を壊してまで取り戻したかったのは、それだけでした。
ヴィランの物語として始まり、ヴィランの願いで終わる。ここまで振り切った構成だったんですね。
以上が、流出したとされる脚本の全編です。

ぼくがこの話を面白いと思うのは、内容そのものよりも「比べられること」にあります。
本物だとしても偽物だとしても、ここに書かれた骨格——インカージョン、バトルワールド、ヒーローの大量集結、鍵となるアイテムの奪い合い——は、今の『ドゥームズデイ』とかなり重なっています。
変わったのは、頂点に座る人物だけ。
カーンは「時間を支配する者」でした。ドゥームは「世界を作り替えて神になろうとする者」です。
同じ舞台に、違う神様が立った。
12月に本編を観たあと、この話を思い出すと二度おいしいと思います。
ドゥームズデイ公開までに観ておきたい作品

12月まではまだ時間があります。予習しておくと満足度が変わりそうな作品を挙げておきます。
なお2026年9月23日には『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』の劇場公開も決まっています。スクリーンで復習できるのはありがたいですね。
まとめ

みなさんはどうだったでしょうか!?
幻のカーン・ダイナスティ、ぼくは正直「これはこれで観たかった……」と思ってしまいました。
ドゥームズデイが公開されたら、ぜひこの記事に戻ってきて比べてみてくださいね。12月18日、劇場でお会いしましょう!


当時の布陣