⚠️ この記事はネタバレを含みます
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』のヴィランの正体・結末・ポストクレジットシーンまで、すべて書きます。
まだ観ていない方は、先にネタバレなし版をどうぞ。
観てきました。そして、観終わってからずっと考えています。
この映画で一番心を掴まれたのは、派手なアクションでも、ヴィランの正体でもありませんでした。ピーターがMJとネッドに対して、少しずつ関わり方を変えていくところです。
一気に距離を詰めるわけではありません。遠くから見ているだけの状態から、何度も接触を重ねて、そのたびに一歩ずつ踏み込んでいく。その積み重ねが、この映画の背骨だと思っています。
この記事では、その流れを追いながら、ヴィランの正体や黒幕の構図、ラストの意味までまとめます。
あらすじを時系列で完全整理
まず、何が起きたのかを最初から最後まで整理します。観終わった直後の頭の整理用にどうぞ。
■ 発端 全人類から忘れられて4年。ピーターはスパイダーマンとして街を守りながら、SNSでMJとネッドの学生生活を追いかけている。
■ 事件 暴走した戦車がダメージ・コントロール局の施設に突入。運転手は何者かに精神を支配されていた。犯人は次々と別人に乗り移りながら「V-MAX」を探し続ける。この混乱でスコーピオンが脱獄。
■ 変異 MJが新しい恋人とキスする姿を見た直後、ピーターの体内でクモホルモンが急増。手首から直接糸が出るようになり、感覚過敏で街の騒音すら苦痛になっていく。スコーピオン戦では我を失って暴走し、圧倒するも、巻き込まれた警官が死にかける事態に。力を抑える必要を感じたピーターは、ハルクの制御に成功しているブルース・バナーへ技術を聞きに行き、クモホルモンの抑制装置を開発。自分に装着する。
■ 正体 ニュー・アベンジャーズのエレーナ・ベロワ(ブラック・ウィドウの妹分)から「犯人はV-MAXという何かを探している」との情報を得る。憑依犯の正体は謎の少女ジーン・グレイ。ピーターは彼女を捕獲し、ダメージ・コントロール局へ引き渡してしまう。
■ 反転 ジーンの姉サラは、ダメージ・コントロール局の人体実験で殺されていた。「V-MAX」は施設の「VENT-MAX(最大換気)」の掠れた表示。メッツガー局長こそが黒幕で、ピーターは利用されていた。
■ 決戦 ジーンの能力でハルクが暴走。これを退けたピーターは、局の傭兵と化した忍者集団ハンドと交戦。「ピーターかスパイダーマンか」と問われ「両方だ」と答え、自分の意志で抑制装置を外す。かつて暴走した力を、今度は自力で制御してみせる。
■ 結末 ピーターはジーンに寄り添い、メイの言葉を届ける。直後、フランクの狙撃からジーンを庇って重傷を負うが、一命を取り留める。MJの記憶は戻らないまま。ラストでネッドとハンドシェイクを交わすと、ネッドが「ピーター」と口にして本編終了。

MCUのどの時点の話?
ニューヨークを舞台にした他作品との前後関係も確認できます。
- ニューヨーク市長がシーラ・リベラになっている。彼女はドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』で市長フィスク(キングピン)の側近だった人物。つまり本作はドラマでのフィスク失脚後の話
- ニュー・アベンジャーズの名前が登場するため、映画『サンダーボルツ*』より後
- 12月公開の『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』の直前に位置するMCU映画
ピーターの「変異」とは何だったのか
本作のもうひとつの軸が、ピーター自身の身体の異変です。整理しておきます。
クモホルモンの暴走
きっかけは、MJが新しい恋人とキスする場面を目撃したことでした。その直後から、ピーターの体内でクモホルモンが急増しはじめます。
- 手首から直接糸が出るようになる(ウェブシューターが不要に)
- 感覚過敏が発動し、街の騒音や光が苦痛になる
- 力・スピード・反射神経が跳ね上がる
重要なのは、この変異が感情の昂ぶりと明確に共鳴していることです。MJへの未練、孤独、ストレス。抑え込んできた感情が、そのまま身体を暴走させる。
つまりこれは単なる体質変化ではなく、4年間ひとりで抱えてきたものの物量が形になったものだと読めます。
スコーピオン戦での暴走
その力が最悪の形で爆発するのが、脱獄したスコーピオンとの戦いです。
我を失ったピーターは、目が蜘蛛のように真っ黒になり、とんでもない反射神経とスピードとパワーで相手を圧倒します。強い。強いのですが、完全に制御を失っている。
そして、あまりに滅茶苦茶な戦闘に巻き込まれて、警官が死にかけます。
人を守るための力で、人を殺しかけた。
この出来事がピーターを変えます。「この力は抑えなければならない」と。
ブルースに会いに行った理由
ここで、ハルクことブルース・バナーの出番です。
ブルースは自身の開発した装置で、ハルクの力を抑え込むことに成功していました。ピーターはその技術を聞きに行き、クモホルモンを抑える抑制装置を開発して、自分の身体に装着します。

自分の力を、自分で封印する。この選択が終盤への長い長い前振りになっています。覚えておいてください。
まず整理|今回のヴィランは誰だったのか
物語の話に入る前に、いちばん混乱しやすいところを整理します。
憑依していたのはジーン・グレイ
次々と人の精神を乗っ取り、「V-MAX」という謎の言葉を追って神出鬼没に動いていた人物。本人にもそれが何なのか分かっていません。 殺された姉が残した、唯一の手がかりだったからです(正体は後述します)。
その憑依犯こそ、ジーン・グレイでした。
テレキネシス(念力)、テレパシー、憑依といったサイオニック能力を持つ、「X-MEN」シリーズで知られるキャラクターです。原作コミックでもマーベル屈指の強さを誇ります。
演じたのはセイディー・シンク。『ストレンジャー・シングス』のマックス役で知られる俳優です。

正直に言うと、観ている最中は誰なのか分かっていませんでした。名前を聞いて「あのジーン・グレイか」と驚いたクチです。
なぜX-MENのキャラが出てきたのか
これには映画会社の事情があります。
X-MENの映画化権は長く20世紀フォックスが持っていて、MCUとは別の世界として作られていました。2019年にディズニーがフォックスを買収したことで、ようやく同じ世界に登場できるようになったわけです。
つまり本作は、MCU本編におけるジーン・グレイの初登場作品ということになります。
今回、ジーン・グレイがミュータントであるとは明言されていません。
MCUのこの世界では、これまでミズ・マーベル(カマラ・カーン)とネイモアがミュータントであることが示唆されてきました。ジーンがそこに連なる存在なのかは、まだ確定していません。
公開前から仕込まれていたヒント
役名は最後まで伏せられていましたが、後から振り返ると露骨なヒントが出ていました。
公開の1週間前、サンディエゴ・コミコンのマーベル・スタジオのパネルに、ライアン・レイノルズが灰色のデッドプールのコスチュームで登場しています。素材がデニム(ジーンズ)で、色がグレー。
ジーンズ+グレー=ジーン・グレイ
こじつけに見えますが、セイディー・シンク自身も役名が伏せられていた時期に、インタビューで「グレーのジーンズ」について質問を受けていたと報じられています。

気づいた人がいたなら相当すごいです。僕は完全に見逃していました。
スコーピオン、覚えてました?
もう一人、序盤で脱獄するヴィランがいます。スコーピオンことマック・ガーガンです。
これ、『ホームカミング』をかなり細かく覚えていないと分からないと思います。
どこに出ていたのか
マック・ガーガンは『スパイダーマン:ホームカミング』に登場し、逮捕されていた人物です。首元にサソリの刺青を彫った殺人鬼で、ハイテク武器の取引をピーターに邪魔された過去があります。
本作では新たにハイテクスーツを身にまとって再登場しました。

「そういえばそんなキャラいたな」となる程度の記憶だと、正直そのまま流れていきます。名前を出されてもピンと来ない人のほうが多いんじゃないでしょうか。
他にも小ネタが多い
序盤には他のヴィランも短く顔を出しています。
- トゥームストーン(ロニー・トンプソン・リンカーン):アニメ「スパイダーバース」シリーズでお馴染み
- ブーメラン
- タランチュラ
このあたりは分からなくても本編の理解には支障ありません。気づいた人が得をするだけの配置です。
逆に言えば、ネタバレなし版で「過去作を観ている人ほど得をする」と書いた理由のひとつがこれです。
真のヴィランはダメージ・コントロール局だった
ここが本作のややこしいところであり、面白いところです。
ジーンは確かに危険な存在として描かれます。しかし物語が進むにつれ、彼女を追い詰めた側にこそ問題があったことが明らかになります。
「V-MAX」の正体
ジーンが探し続けていた「V-MAX」。これは組織名でも兵器名でもありませんでした。
ダメージ・コントロール局の施設に書かれていた「VENT-MAX(最大換気)」という表示の文字が掠れて、「V-MAX」に見えていただけだったのです。
そこまでして彼女が突き止めようとしていたのは、姉のサラの死の真相でした。サラはダメージ・コントロール局の人体実験によって殺されていた。それを知ったジーンの能力が暴走します。
メッツガー局長の企み
そしてダメージ・コントロール局の局長、ビル・メッツガー。
彼は対スパイダーマン用の兵器を開発しながら、スパイダーマンを騙してジーンを捕獲させていました。
つまりピーターは、知らないうちに黒幕の手駒として使われていたことになります。ジーンを「危険なヴィラン」として捕らえ、当局に引き渡した行為そのものが、相手の思う壺だったわけです。
| 立場 | |
| ジーン・グレイ | 姉を殺された被害者であり、暴走した加害者 |
| メッツガー局長 | ミュータントを人体実験に使う真の黒幕 |
| ピーター | 善意で動いた結果、黒幕に利用された |

分かりやすい悪役がいない、と思っていたら、こういう構造でした。予告に敵が出てこなかった理由がここで腑に落ちます。
メッツガーがどうなったかは描かれていません。
ラストで、彼が行方知れずになっていることに触れられるだけです。身柄が押さえられていない以上、今後のMCU作品で再登場する可能性は十分にあります。
ゲストキャラ総まとめ|エレーナ・ハルク・ハンド
本作はゲストが豪華でした。それぞれの役どころを整理します。
エレーナ・ベロワとは誰?
まず「誰?」となった人向けに説明します。
映画『ブラック・ウィドウ』で初登場した、ナターシャ(初代ブラック・ウィドウ)の妹分です。姉と同じ暗殺者養成機関の出身で、姉の死後は『ホークアイ』『サンダーボルツ*』に登場。現在は政府公認ヒーローチームニュー・アベンジャーズの中心人物になっています。
本作では、温泉のような施設を備えた自分たちのオフィスにスパイダーマンを招き入れ、連続襲撃犯が「V-MAX」を探しているという重要情報を渡します。

くつろぎ空間に呼びつけて重要情報を渡す、という絵面がすでに面白いんですよね。スパイの流儀なのか何なのか。
今回のエレーナは、政府公認ヒーローチームのリーダー格として、かつてのトニー・スタークのようなポジションでピーターに接します。スパイ出身だからこそ情報屋の役目を担う、という配置も上手いです。
そして彼女はピーターの孤独に触れます。姉のナターシャを失って孤独に苛まれていた彼女だからこそ、今はチームの仲間がいる彼女だからこそ、ピーターを気にかけられるのでしょう。
ハルク(ブルース・バナー)
身体を制御できなくなったピーターの相談相手です。ブルースはハルクの力の制御に成功しているため、ヒントを求めたわけです。
ブルースは『シー・ハルク:ザ・アトーニー』で、従妹ジェニファーのDNAを用いてブルースとハルクの融合に成功しています。本作の助言者ポジションはその延長線上です。
なお終盤ではジーンの能力で暴走させられ、スパイダーマンとパニッシャーの前に立ちはだかります。
ハンド(忍者集団)
ドラマ『デアデビル』を中心とする〈ディフェンダーズ・サーガ〉で「ヤミノテ」として知られた組織が、それ以外のMCU作品に初登場しました。本作ではダメージ・コントロール局の傭兵として立ちはだかります。

元は貧しい若者たちの集まりという、嘘か本当か分からない設定も紹介されます。詳しい背景は今後の作品待ちです。
本題|ピーターとMJ・ネッドの距離は5段階で変わる

ここからが、僕がこの映画で一番語りたい部分です。
ピーターは二人に対して、作品を通して何度も接触します。そのたびに関わり方が変わっていく。整理すると、こういう流れになっています。
① 遠くから見ているだけ ② 事件に巻き込まれて否応なく接触する ③ 隠していた過去がバレる ④ 別の形で自分から会いに行く ⑤ 素顔のまま一歩踏み出す
順番に見ていきます。
① 遠くから見ているだけ
物語の開始時点で、ピーターは二人に一切接触していません。
ただし完全に断ち切れているわけでもない。彼はSNSで、MJとネッドの学生生活を追いかけています。
二人から離れるという選択は、危険から守るためのものでした。それでも見るのをやめられない。この時点でピーターの側に未練が残っていることが、はっきり示されます。
ここが上手いと思いました。「もう関わらないと決めた」で終わらせず、決めきれていない状態から始める。だからこの後の変化が意味を持ちます。
② 巻き込まれて接触する
そこに事件が起きます。
ジーンがMJに憑依したことで、ピーターは望まない形で彼女と向き合うことになります。憑依したジーンはピーターにキスをして弄び、さらにMJの身体のまま屋上から飛び降りるという凶行に及びます。
■ 口元だけマスクを外してのキス サム・ライミ監督版『スパイダーマン』の、あの逆さ吊りキスへのオマージュ。
■ 高所から落ちる恋人を助けようとする場面 マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』へのオマージュ。

スパイダーマン映画の名場面を、こんな悪意のある形で再現してくるとは思いませんでした。
この段階のピーターは、まだ自分から踏み込んでいません。事件のせいで会わざるを得なかっただけです。
③ 過去がバレる
そして転機が来ます。
ジーンを捕獲した直後、事件は起きます。
ピーターの部屋には、一通の手紙がありました。前作『ノー・ウェイ・ホーム』で、全人類の記憶から自分を消す直前——MJに宛てて書いたものです。彼はこの4年間、それを渡すことも、読み返すこともできずにいました。
その手紙を、MJに盗み見られてしまいます。
打ち明けたのではありません。バレたのです。 自分のタイミングで話す資格すら、彼には残されていませんでした。
MJは、自分たちの関係をピーターが勝手に決めたことに対して抗議します。そして、記憶がないからあなたを愛していない、と言い切る。
このやり取りは、『ノー・ウェイ・ホーム』公開直後に米マーベル公式で公開された、トム・ホランドとゼンデイヤの会話を踏まえた内容になっていると指摘されています。
ゼンデイヤ自身が前作ラストのピーターの選択に納得しておらず、その想いが本作で明確に言語化されたわけです。
ピーターの選択は、間違いなく愛から出たものでした。それでも、勝手に決められた側には怒る権利がある。
MJのセリフは残酷ですが、正論です。そしてピーターは、この非難を一度きちんと受け止める必要があった。
この直後の、二人でのスイングが本当につらいです。
④ 別の形で自分から会いに行く
ここで関わり方が変わります。
ピーターはスパイダーマンとしてネッドに会いに行き、まるで古くからの親友のようにコミュニケーションを取ります。
素顔では会えない。記憶も戻らない。それでも「関われる形」を自分で見つけて、自分から動いたわけです。①の遠くから見ているだけだった彼とは、明らかに別人です。
そして、その二人の姿をMJが絵に収める。
この場面が好きです。三人は繋がっていないのに、同じ場所にいる。関係は失われても、関わり方はゼロにならないということを、セリフなしで見せてきます。
⑤ 素顔のまま一歩踏み出す
そしてラスト。
ピーターは店でネッドを見かけると、あのハンドシェイクを交わします。
『ホームカミング』から続く、ピーターとネッドの二人だけの複雑な握手です。手を組み替えながら決めポーズまでつながる、高校時代の親友同士のノリそのもの。シリーズを通して何度も登場してきました。
記憶がないはずのネッドが、この複雑な手順に身体で応えてしまう。
するとネッドが、「ピーター」と口にする。
ここで本編は幕を閉じます。
ネッドは記憶を取り戻したのか?

観た人全員が引っかかる場面だと思います。僕も分かりませんでした。
先に結論を書くと、明言はされていません。
「戻った」と読む根拠
- ネッドがはっきり「ピーター」と名前を呼んだ
- 身体が握手を覚えていた、という描き方になっている
- ネッドは『ノー・ウェイ・ホーム』で魔術師の家系であることが明かされている
- スリングリングを使って別次元からスパイダーマンを召喚した実績がある
- そのため、ドクター・ストレンジの魔術に対する耐性があったのではないか
「まだ分からない」と読む根拠
- 記憶が戻ったとは一言も言われていない
- 名前を呼んだだけで、それ以上の描写がない
- 本編はそこで終わってしまう

断定している記事も見かけますが、僕は分からないように作られているのだと思っています。観客に委ねる終わり方です。
どちらの解釈でも、ピーターが自分から握手をしに行ったという事実は変わりません。①の段階では絶対にできなかったことです。
記憶が戻ったかどうかより、そこが大事なんだと思います。
MJの結末|ネックレスが意味するもの
MJの記憶は最後まで戻りません。
ただし、ラストに重要な場面があります。MJが屋根の上で、ブラックダリアのネックレスに触れるのです。
『ファー・フロム・ホーム』でピーターがMJにプレゼントしたものです。
『ノー・ウェイ・ホーム』のラストで記憶を失ったあとも、MJはこれを身につけ続けていました。
理由は覚えていない。それでも手放していない。
二人の過去が完全に消え去ったわけではない、ということの証明です。今回は元の関係に戻りませんでしたが、可能性は残されました。
「両方だ」|本作最大の名場面
ここも書いておきたい場面です。
黒幕の正体を知ったピーターは、ダメージ・コントロール局の傭兵と化した忍者集団ハンドと戦うことになります。
その最中、こう問われます。
「お前はピーター・パーカーか、スパイダーマンか」
「両方だ」
どちらかを捨てない。これがピーター・パーカーというキャラクターの本質だと思います。
そしてこの場面で、彼は自分の意志で抑制装置を外します。
思い出してください。この装置は、スコーピオン戦で暴走し、警官を死なせかけた罪悪感から、自分で自分に付けた枷でした。
- 暴走して人を傷つけかけた → だから力を封じた
- ブルースの助言:事前に刈り取ってしまうと、その力が善か悪かの判断すらできない
- 終盤:封印を自分の手で解き、それでも暴走せず、自力で制御してみせる
力を恐れて封じ込めた男が、力を受け入れたうえで乗りこなす。変異のドラマの答えがここにあります。
黒い目の暴走状態と同じ力を使いながら、今度は我を失わない。スコーピオン戦との対比で見ると、この場面の意味がはっきりします。
メイの言葉が、ジーンに届く

個人的に、いちばん構成が上手いと思ったのがここです。
ハンドとダメージ・コントロール局を退けたピーターは、今度はジーンを自分の内部へと招き入れます。
特別な力を持って生まれたせいで狙われ、大切な人を失った少女。そのジーンに寄り添ったのは、亡きメイ・パーカーでした。
本作では、ピーターと亡き叔母メイの思い出の場面が、回想として繰り返し挿入されます。
時期は『ホームカミング』の頃。メイがピーターの正体を知った直後、まだ15歳のピーターと交わした会話だと見られています。つまり、スパイダーマンとしての彼を最初に受け止めてくれた人の言葉です。
このときメイがピーターに送った言葉が、そのままジーンにも届けられます。
要約するとこうです。特別であるせいで酷い目に遭うこともある。それでもあなたは美しく、周りの人が愛しているのはあなたがあなただからだ。孤独だと感じても、それを覚えておくことがあなたの責任だ。
スパイダーマンといえば「大いなる力には、大いなる責任が伴う」です。
本作はこれを、力を持っていても、自分はありのままで愛されているのだと忘れないことが、自分に対する責任という意味に読み替えました。
シリーズの根幹にある言葉を、まったく違う角度から捉え直しています。
叔母を亡くしたピーターが、姉を亡くしたジーンに「僕がいる」と告げる。力を得た者同士、大切な存在を失った者同士として、支え合うことができる。

亡くなった人の言葉が、別の誰かの中で生き続けて、また別の誰かを救う。この繋がり方が本当に良かったです。
フランクとの友情
しかし、そこでパニッシャーことフランク・キャッスルがジーンを狙撃します。
これをスパイダーマンが身を挺して防ぎ、倒れてしまう。
その後の展開が良いです。
- フランクがピーターを病院に運ぶ
- ジーンもサイコキネシスでピーターを支える
- 病院の周囲に、スパイダーマンを愛する人々が詰めかける
- ピーターは一命を取り留める
涙目になっているフランクを見て、ピーターが笑う。そこで二人は、ふわっと互いが友達であることを認識します。
フランクもまた、家族を殺された喪失を抱えた人間です。
ジーンもフランクもピーターも、全員が「大切な人を失った孤独な者」として並んでいる。本作のテーマがここに集約されています。
その後フランクは、狙撃をきちんと謝罪したうえで、ピーターが病院を出られるようにスパイダーマンになりすまして人々の目を引く役目を買って出ます。

あのフランクが素直なんですよね。ピーターの前だけ。
ポストクレジットシーンの意味
エンドロールが終わったあとの映像です。
ネッドが開発したスパイディ・トラッカーが映り、クイーンズではスパイダーマンの位置が不明と表示されます。
そこから画面がズームアウトしていき、月を越えた先の宇宙で、スパイダーマンの位置が特定されます。
そして「スパイダーマンは帰ってくる」という予告が出て、そこで終わります。

劇場でこれを見た瞬間、思わず「え、宇宙行くの?」と声が出そうになりました。
考えられる3つの解釈
12月公開の『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』で、スパイダーマンが宇宙に行く
もっとも素直な読み方です。トラッカーが宇宙を指しているのだから、本人が宇宙にいる。そのまま受け取ればこうなります。
ただし引っかかる点があって、『ドゥームズデイ』へのトム・ホランドの出演は発表されていません。
別のユニバースから来たスパイダーマンが検知された
『サンダーボルツ*』のラストでファンタスティック4が現れたときと同じパターンです。
トビー・マグワイア版とアンドリュー・ガーフィールド版の再登場の示唆
検知された場所が本当に宇宙空間なのではなく、別ユニバースにいることを示していただけという読み方もできます。
作ったのがネッドである意味
見逃せないのが、このトラッカーを作ったのはネッドだという点です。
ネッドは魔術師の家系であり、実際にスリングリングで別次元からスパイダーマンを召喚した経験があります。
ネッドの作った装置が、別ユニバースのスパイダーマンを検知した。そう考えると、ラストで彼が「ピーター」と口にしたことにも意味が出てきます。

このあたりは完全に考察の域です。答え合わせは今後の作品を待つしかありません。
今後のMCUはどうなる?
本作が残した宿題を整理します。
■ ジーン・グレイ 自由の身のまま。演じたセイディー・シンクは、2027年公開の『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』への出演が発表されています。
■ メッツガー局長 行方不明。ミュータントを人体実験に使う黒幕として、今後も脅威になる可能性があります。
■ ハルク 暴走した件で取り調べを受けており、しばらく表には出られなさそうです。
■ フランク・キャッスル スパイダーマンの正体を知った友人として、今後も関わってきそうです。
■ ハンド 制作が決定している『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン3に登場するかどうか。
『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』へのトム・ホランドの出演は発表されていません。そのため、スパイダーマンとジーン・グレイが揃って『シークレット・ウォーズ』でカムバックする、という見方もあります。
いずれも現時点では未確定です。
よくある質問(ネタバレあり)
Q. ヴィランの正体は誰? A. 憑依能力で暴れていたのはジーン・グレイです。ただし真の黒幕はダメージ・コントロール局のメッツガー局長でした。
Q. ジーン・グレイはX-MENとして登場した? A. いいえ。本作ではミュータントであるとは明言されていません。MCU本編への初登場ではありますが、X-MENとしての位置づけは今後の作品待ちです。
Q. MJの記憶は戻った? A. 戻っていません。ただしピーターとの過去は手紙の発見によってバレており、ラストでは彼からもらったネックレスに触れる場面があります。
Q. ネッドの記憶は戻った? A. 明言されていません。ハンドシェイクの後に「ピーター」と口にするため、戻った可能性を示唆して本編は終わります。
Q. メッツガー局長はどうなった? A. 描かれていません。行方不明のまま本編が終わるので、再登場の可能性があります。
Q. ポストクレジットシーンは何を意味している? A. スパイディ・トラッカーが宇宙でスパイダーマンを検知します。『ドゥームズデイ』での宇宙行き、別ユニバースのスパイダーマン検知など、複数の解釈が可能です。
Q. ピーターは死んだ? A. 生きています。フランクの狙撃からジーンを庇って重傷を負いますが、一命を取り留めます。
まとめ|距離が変わっていく話だった

- 憑依していたヴィランはジーン・グレイ。MCU本編では初登場
- 真の黒幕はダメージ・コントロール局のメッツガー局長。行方不明のまま
- 「V-MAX」の正体はVENT-MAX(最大換気)の掠れた表示
- MJの記憶は戻らない。 ただしネックレスは手元に残っている
- ネッドが記憶を取り戻したかは明言されていない
- メイの言葉が、責任という言葉の意味を捉え直す
- エレーナが情報屋、ハルクが助言者、ハンドが刺客として登場
- ポストクレジットは宇宙でスパイダーマンを検知。解釈は複数ある
最初に書いたとおり、僕がこの映画で一番好きなのは、ピーターがMJとネッドへの関わり方を少しずつ変えていくところです。
遠くから見ているだけだった男が、最後には自分から手を差し出す。
記憶は戻りませんでした。関係も元通りにはなりません。それでも彼は、その状況で自分にできる関わり方を見つけて、一歩踏み出した。
派手なサプライズはありませんでした。でも、こういう映画のほうが後から効いてきます。

観る前の予想が全部外れた145分でした。もう一度、今度は字幕版で観に行こうと思っています。
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。今後の作品に関する記述はすべて考察であり、確定情報ではありません。

